舞子の松と、塩屋の旧ジョネス邸

10階建てマンションを建設するために、取り壊されようとしている塩屋の旧ジョネス邸。
「旧ジョネス邸を次代に引き継ぐ会」を中心に地元住民などが総力を結集して粘り強く存続活動を続けた結果、7月1日に、所有者の穴吹興産が6月末だった解体期限を9月まで延長することを決定した。
取り壊しをやめたわけではないので、これからが正念場、まだまだ募金活動や資金集め、スポンサー探しなど、問題はそのまま残る。
日常の生活と貴重な歴史の存続のどちらが重要か一言では語れないが、一度失われたものは二度と還らないということを考えると、慎重に事にあたってほしいと思う。
そういう意味で、舞子の松も今、存続の危機が言われているらしい。
昔、参勤交代の折「自分の庭に持って帰れるものなら千両出しても惜しくない」と鍋島藩の殿さまに言わしめた舞子の「千両松」の松林。
第2次世界大戦時に資源として多数切り取られ、また戦後の松くい虫被害、2号線の拡張工事、明石海峡大橋の建設と、次々痛手をこうむったが、今は2号線とJRとの間に、舞子公園として閑静な松林が残されている。
この松林が成長して、昔のようにりっぱな「根上がりの松」が育つと信じていた。
だが、ある樹木医によると、舞子の松はもういつ枯れ始めてもおかしくない状態らしい。
まず、松は根を張るために、下方の太い幹が土の上に出ていないといけないそうだが(根上がりの松はそういう意味でも健康に育っていた)すべて埋まっていて今はしっかり土中に根を張れなくて酸欠状態。
また、事件発生などの予防から、下方の枝はすべて数十センチを残して、枝を刈られている。
下方の枝は、風などを緩和する働きがあり、それがない上に根張りが充分でないので、木は文字通り必死に踏ん張っているストレス状態。また幹に沿って枝を刈らずに残して切っているので、木自身の修復が叶わない(幹から切っていたら、樹液でかさぶたのようなものを作って修復するらしい)。
松ぼっくりが異常にできているのは、危機感から次世代の子孫を残すための策とか。
新芽がついた枝が、上を向かず下がっているのが弱っているあかしだそうだ。
そう聴いて、松林の中を歩くと、すべて言われた通り。
昔明石海峡大橋の建設模様が眺められる施設、舞子タワーがあった場所に作られた「根上がりの松」復活プロジェクト。盛り土に植えられた松が育ったら、下の土を人の手で取り除いて「根上がり」させるという、本気で考えたのか冗談なのか分からないものがある。松のことは考えず、人のためだけのイベントなのだろう。
子供のころ、NHKのドラマ、下村湖人の「次郎物語」のオープニングの歌に「次郎見てごらん、松の根は岩を砕いて生きている」というフレーズがあったが、松はそういう木なのだと思う。
一度なくしたものは、本当の意味で戻ることはない。
松と建物は一緒にできないが、現在の技術で簡単に壊してしまえるところは、一緒。
刹那の損得勘定だけで決定しないでほしいと思う。          (堀)
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コメント

  1. 右田☆ より:

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    おもちゃ箱さん、 3月、ブログに取り上げていただ
    クラフトオリオンです。
    今は、店のことは第2、 第1は、旧ジョネス邸保存に
    頑張っております。
    おもちゃ箱さんの、 ジョネス邸の記事はやはりとてもよかった。
    舞子の松のこと、 教えていただいてありがとうございました。
    須磨・塩屋・舞子から明石へと続く景観は、 神戸のものにとっは、もちろんのこと、日本人への大切な遺産だと思うのです。

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