舞子ホテルは、大正の海運王・日下部久太郎(日下部汽船)により、海外からの賓客を迎える迎賓館も兼ねた別邸として1919(大正8)年ごろ建設された。
当時の邸宅の例に倣い、広大な入母屋屋根と書院造りの和館と、コンパクトな洋館で構成されていて、和館は日常生活用に、洋館は接客用に用いられていた。
白レンガ作り地上3階・地下1階の英国風西洋館、
それに続く70畳敷大広間の部分と、その西側の5つの和室を持つ平屋建ての2棟、
その後、昭和初期に北側に建てられた数寄屋風の2階建ては、それぞれの部屋の意匠が違っていた。
1942(昭和17年)年に「舞子ホテル」として営業を開始。
1963(昭和38)年、山陽電鉄の子会社が営業を引き継いだ。
その後阪神淡路大震災などを経て、老朽化が著しくなり、
建物の傾斜や、天井などの一部落下など、安全面で問題となり、これ以上補強や改造では維持が不可能と判断されたため、最終的にホテル業は廃業し、土地建物は譲渡することに。
その後、取り壊され、現在はマンション建設に向けて工事が進んでいる。
玄関ポーチ両側のステンドグラス、打上げ天井の玄関ロビー。
人気の高かった応接間には、格天井・寄せ木模様張りの床仕上げや、大理石の暖炉、
同室の家具はシンガポールで買い入れ、自社の船舶で運んできたものといわれていた。
応接室横の階段の支柱には、夜の航海を守る「ふくろう」の浮彫。
これらの一部が、山陽電機鉄道株式会社本社ビル(神戸市長田区)の1階ロビーに、展示されていると、ある方から情報が。
残念ながら、和館の方は老朽化が進んでいて、ほとんどが残されていないという。
展示品は、写真撮影許可、椅子など調度品に座ったり、触れたりも可能だそう。
興味のある方は、ぜひ!
予約は要らないが、ご厚意で復元・保存場所の開放をしてくださっているので、開館・閉館間近な時間帯は本業に障らないよう、できるだけ避けて。
【Data】
神戸市長田区御屋敷通3丁目1番1号
山陽電機鉄道株式会社本社ビル
開館時間 平日 9:00~17:00
(2023年11月現在) (堀)